天使の歌


セティは川岸に跪いて、溜め息を ついた。

微かに触れた、滑らかな細い指。

直ぐに離れた、あの感触。

(……やっぱり、何処に行っても……誰と居ても……。)

俺は、“忌み子”なんだ。

キュティさえ居てくれれば良い。

そんな想いも浮かぶが、彼女に迷惑は掛けられないとも思う。

キュティには、
幸せに なって欲しい。

膝を抱えて、顔を埋め、銀髪を風が撫でて行くのに身を任せる。

生きたいと言う想いと、
死にたいと言う想い。

それ等が ごちゃ混ぜに なって、セティは再び、溜め息を ついた。

(……食器……洗わなきゃ……。)

桜と樹と居る間は、自分が出来る事は精一杯やろうと決めた。

キュティを護ってくれた彼等への、僅かな恩返しだ。

のろのろと立ち上がって、食器に手を伸ばし。

「!?」

その刹那、気持ち悪さを感じて、セティは顔を背けた。

胸に熱い塊が込み上げて来て、気が付くと身を丸めて、嘔吐していた。

「……ぐっ……うぇっ……。」

霞む視界に、自分が吐いた物が映る。

朝食に食べた物と。

――綺麗な赤をした、血。

(……ああ……吐血してる……。)

吐き続けながら、セティは冷静に考えていた。