「でもね、2人共、偽造する事は出来るわ。翼は どうするか置いといて……キュティちゃんの容姿なら、アメリカ人との混血(ハーフ)だって言えば通用するし。」
「あめりか人?」
「人界はな〜、日本人とか、アメリカ人とか、住んでるとこで名前が変わるんだ。」
訊き返したセティに、樹が答える。
「セティ君は、髪を染めて、カラコンを入れて……耳は しょうがないから生まれ付きって事に するしかないかな。」
「髪を染める……?」
「からこん……?」
キュティとセティの頭の上に浮かぶのは、はてなマークばかりだ。
「兎に角、見て学べば良いわ。最悪、私達の家である神社は人気(ひとけ)の無い山奥に在るから、誰とも関わらず、2人で生活しても良いし。」
「2人で、生活……。」
何て良い響きなんだろう。
もう誰にも、罵られる事は無い。
「ねぇ、セティ。そうしようよ!」
セティの服の裾を掴んだキュティの手を、彼は そっと押し戻した。
「?」
「キュティ、忘れてないか?」
「何を?」
きょとんとするキュティに、セティは冷静に言葉を紡ぐ。
「信じる優しさと、疑う強さ。」
「あ。」
そうだった。
元はと言えば、キュティが その言葉を理解 出来なかった所為で、こんな事に なったのだ。