天使の歌


何処か満足したような、暗い光を浮かべた瞳。

(……違う。)

セティは、こんな瞳、していない。

彼の瞳は、一見 無表情に見えるけど、良く良く見ると今にも泣き出しそうな、哀しい瞳を していた。

苦しい、寂しいと、いつも訴えていた。

こんなセティ、私は知らない。

キュティは、セティの腕から、手を離した。

「貴方、誰なの?」

キュティの声は、緊張している。

「私が知ってるセティは、誰かを傷付ける事を、恐れてた。そんなに楽しそうな顔、してなかった。貴方、誰なの!?」

「誰って……。」

セティは、銀髪を掻き上げる。

「セティだよ、もう1人の。」

「……もう1人の、セティ……?」

反芻すると、セティは頷いた。

「そ。今迄お前と一緒に旅してた奴が、天使の方のセティ。俺は、悪魔の方のセティ。」

「……どうゆう、事……?」

「人格が2つ在るんだよ。俺は ずっと、天使のセティを通して、この世界を見て来た。」

セティは、自身の胸に手を当てる。

「あいつに、任せ過ぎちまったんだ。あいつの心は、もう壊れ掛けてる。だから、俺が出て来た。」

「…………。」

「あいつは、俺の心の中で、休んでる。もう、苦しまなくて済むんだ。」