天使の歌


ざわざわと、騒めきが聞こえる。

もう1人のセティは、目を開け、ゆっくりと顔を上げた。

いつの間にか、処刑場の上に居たセティの姿は、変化していた。

一房だけ在った金髪は、銀に変色し、蒼かった左瞳は紅く染まり、左耳は右耳 同様 尖り、白銀の左翼は、漆黒へと変わっている。

正しく、悪魔の姿、そのものだった。

(……これは、怖いわな……。)

セティは内心で、声を上げた。

聖なる存在の筈の天使達の瞳には、蔑みの光しか無い。

(……“お前”、良く頑張ったな。)

自身の心の中に沈んでいる天使の自分に、そっと声を掛ける。

今 此処に居るセティは、“セティ”の中の、悪魔の血の部分だった。

“セティ”が生まれた時から ずっと、心の片隅に居て、ずっと“セティ”を通して外の世界を見ていたセティだった。

所謂、別の人格。

二重人格のようなものだった。

(……中で見てるのとじゃ、やっぱ違ェよな。)

只の風景とは違う。

蔑みのオーラを、ひしひしと感じた。

「さぁ!!この忌み子を どうしてくれる!!」

今迄 音でしかなかったスティの声が、不意に言葉として入って来た。

(……これが、兄貴か……。)

セティは、ふっと笑った。