天使の歌


不思議な感覚だった。

さっき迄、都の処刑場の上に居た筈なのに。

気付けば、何も無い黒い空間に居て。

セティ以外の、誰も存在していなかった。

恐怖から解放され、セティは膝を抱えると、両手で肩を抱いた。

誰の目も無い。

誰も俺を否定しない。

それが、こんなにも穏やかな事だったなんて。

セティ自身は気付いていなかったが、彼の容姿は、いつの間にか変化していた。

母と同じ、濃い金髪。

蒼い瞳。

耳は両方共 丸く、翼は両翼共、白銀に輝いていた。

もし、純血の天使として生まれていたら、恐らく なっていたであろう姿。

「…………。」

何も聴こえない、静かな空間。

セティが ずっと、望んでいた世界。

先程迄 起こっていた事等すっかり忘れて。

セティは、穏やかな心地で、目を閉じた。