――限界だった。
必死に、必死に、優しい記憶に縋り付き。
強がって自分を殺し。
弱さを恐れて優しさを否定した彼の心は。
粉々に、砕け散ってしまった。
――助けて。
暗い暗い世界の中で、必死に光を求める。
――父さん。
――母さん。
助けて。
誰でも良い。
これ以上、俺を否定しないでくれ。
助けて。
――キュティ――。
セティの心に、ぽつりと、1人の少女の姿が、浮かんだ。
金髪の彼女は、明るく笑い。
その刹那。
セティの後ろから現れた誰かが、彼の肩を優しく、後ろに押した。
「…………?」
押した人の後ろ姿が見えた。
艶やかな白銀の髪。
尖った左右の耳。
しなやかな筋肉が付いた躰。
大きな漆黒の両翼。
(……ああ……俺……?)
何故か直観的に そう思い、押されてバランスを崩したセティは、力無く その場に尻餅を付いた。
全てが黒い世界の中で、もう1人のセティは、僅かに振り返った。
紅い、両瞳。
「……もう、良いよ……。」
普段のセティの声より僅かに低い、落ち着いた声。
「もう、お前は休んでいてくれ。」
その言葉を聞いたセティの胸に広がったのは。
暖かな、安心感だった。


