天使の歌


「……あ……。」

その言葉を聞いた瞬間、セティの躰が、びくっと跳ねた。

思わず一歩 後退ると、此処迄セティを連れて来たと思われる男が、その背を押した。

力に負け、つんのめり、セティは、見たくないものを、見た――。

不気味で嫌な光を湛えた、無数の瞳。

(……ああ……。)

この瞳は、良く知ってる。

幼少期に暮らしていた村の、俺を虐めていたリー達の瞳。

俺を殺そうとした、長様の瞳。

母さんを殺した、スティの瞳。

地界で出会い、愛した、シークの瞳。

俺の存在さえも否定した、シークの父の瞳。

逃げる俺を捕らえようとしていた、スティの部下達の瞳。

キュティを騙し、近付いて来た、ディリーの瞳。

俺を嬲り、快楽に酔っていた、リエティーの瞳。

……それ等に宿るのは。

俺を化け物だと信じて疑わない、恐ろしいくらい純粋な光。

俺に対する同情や優しさなんて、全く無い。

誰かを迫害して、周りも同じ事を しているのに安心感を持って、自分達は同じだねと、偽りの連帯感を持っている。

そんな人達しか、居ない。

――怖い。

今迄は、マントや、フードや、ヘッドホンで、容姿を隠し、人の目を避けて来た。

今、セティを護る物は、何も無い。