天使の歌


目を覚ますと、灰色の世界が見えた。

灰色の天井、壁、床、鉄格子。

両足に付いた重い枷。

一瞬、自分が何処に居るのか解らなくて、ぼんやりと それ等を見ている内に、気を失う前に起こった事を思い出した。

「…………。」

ゆっくりと、起き上がってみる。

何だか風邪を ひいた時のように怠いけど、あの、胸を締め付けられるような痛みは、襲って来なかった。

その時、コツコツと足音が聞こえ、誰かが独房に入って来た。

鉄格子の前に立ったのは、橙色の髪を持つ、スティだった。

「起きたか。」

彼は無表情で、口を開く。

「名は?」

「……セティ、です。」

俺はスティの顔を じっと見つめる。

これから殺す者の名前なんか聞いて、どうするんだろう。

ところが、スティは予想外の事を言った。

「そっか、セティな。お前は今日から、此処で暮らして貰う。自由は失うが、何も しなくても飯には有り付ける。悪くねェだろ?」

「…………?」

俺は ぽかんと口を開けてしまった。

その顔が面白かったのか、スティは ふっと笑った。

「何ぽかんと してんだよ。」

「……殺さないんですか?」

「殺す?どうして。」