天使の歌


もう誰も、護ってくれない。

「……さぁ、来い。」

無表情で立っているスティを、涙に濡れた瞳で睨み付ける。

――生きなければ。

父さんも、母さんも、俺を生かす為に死んだ。

――独りでも、生きなきゃ。

「ちっ。……おい、連れて来い。」

「はっ。」

スティは舌打ちして、後ろに立つ男達に、命令する。

彼等は頷くと、飛び掛かって来た。

「!!」

咄嗟に、パニックに なってしまう。

思わず伸ばした右手から飛び出したのは、邪力だった。

「うわあぁ!!」

男達は、黒い余波に吹き飛ばされる。

「ちっ。邪力を使いやがるか!」

スティは俺に走り寄ると、俺の右手を蹴り飛ばした。

「っ!!」

痛みに顔を歪め、それでも何とか逃げようと、左手に神霊(みたま)を集めた瞬間。

血が逆流するかのような激痛が、躰を貫いた。

動けなくなった俺の躰を、スティは蹴り飛ばす。

其処で、俺の様子が おかしい事に気付いた。

「おい……?」

蹴り飛ばされて、地に叩き付けられた態勢のまま、俺は胸を押さえて喘いだ。

「……は……っ。」

息が出来ない。

なのに喉元に塊が込み上げて来て。

俺は初めて、吐血した。