天使の歌


「っ!!」

「連れて行け。」

長様の言葉を聞いた村の役人の男達が、俺の腕を掴む。

俺の躰が、びくんと震えた。

「待っ……触らないで!!俺、何を するか解らない!!」

躰の奥から出て来る、どす黒い何か。

もう1人の自分が、出て来ようと藻掻いているかのよう。

――抑えられない。

「止めて!傷付けたくないっ!!」

必死に男達から離れようとするが、大の大人に適う訳がなく、ずるずると引っ張られる。

その瞬間。

俺の躰から出て来た黒い物が、男達を殴り飛ばした。

「……っ……。」

俺は茫然と その光景を見て。

その場に、崩れ落ちた。

何かが、躰から出て行く。

力が、入らない。

「こいつ!まだ抵抗するか!!」

長様が神霊(みたま)を右手に集めた その時。

すっと誰かが、俺と長様の間に、降り立った。

「……父さ、ん……?」

肩迄 在る銀髪を靡かせて、父さんは真っ直ぐに立っていた。

「長様。待って下さい。」

父さんの声は、穏やかだった。

「息子は、邪力を使った事が無いんです。捕まる恐怖が、息子の邪力の発動の切っ掛けに なっています。このまま何も しなければ、落ち着くでしょう。だから……。」

「悪魔の言う事等 誰が聞くか!!」

長様は怒鳴ると、神力で攻撃して来た。