吐き気が漸く治まり、セティは口を拭いながら、溜め息を ついた。
足に付いた、重い枷を見つめる。
(……これが……。)
――俺の、世界の全てか。
もし、純血の天使として生まれていたら。
こんな風に自由を封じられる事 無く、空を翔べたのだろうか。
悪魔の父も、天使の母も、
大好きだ。
でも、混血(ハーフ)なのは
――嫌だ。
何故、生きていては いけない?
必死に、必死に、息を殺して。
小さくなって生きて来たのに。
結局、最後は これかよ。
セティは、膝を抱えて踞った。
(……キュティ……。)
無事だろうか。
スティは未だにキュティを追っているらしい。
今迄 平凡に生きて来た少女が逃げ切れるとは、思えなかった。
それでも、逃げて欲しい。
こんな辛い想い、して欲しくない。
俺の事なんか。
――忘れて、良いから。
――棄てて、良いから。
その日の夜に出されたパンにも口を付けず、セティは浅い眠りへ落ちて行った。


