天使の歌


階段を上り、スティが居る書斎へ。

歩きながら、ディリーは顔を歪めた。

(あんな顔も、するのね……。)

私の手迄、落とすつもり?

そう訊いた時の、セティの哀しげな顔が、頭から離れない。

ディリーは ずっと、スティの命で、キュティとセティを監視して来た。

遠くから見ていたセティは、いつも無表情で。

自分は生きていて当然、みたいな顔を している彼を、ふてぶてしいとさえ思った。

自分がセティに同情している事に気付いて、ディリーは首を横に振った。

(何 考えてんのよ。あいつは、悪魔の血が混じってんのよ……。)

幼い時、ディリーは両親を、悪魔に殺された。

孤児だった彼女を拾ってくれたのは、スティだった。

(私は、スティ様に忠誠を誓ってるんだから。)

悪魔との混血は、この世に居ては いけない。

死んで、当然なのだ。

ディリーは書斎の扉をノックした。

「誰だ?」

「ディリーです。」

「入れ。」

失礼します、と言いながら、ディリーは書斎の扉を開ける。

ふかふかの椅子に腰掛けたスティは、机に左肘を付いて、座っていた。

「食べてたか?」

「いいえ。……無理矢理 食べさせましたが、吐いてしまいました。」

「そうか……。」

スティは微かに眉を顰めた。