「……セティ。」

呼ばれて振り返ると、其処には最愛の人が居た。

「シーク。」

「セティ!大好きだよ!」

自分より頭1つ背が高い彼女に抱き締められて、俺も優しく彼女を抱き締め返した。

「俺も、好きだよ。」

「……素直で扱いやすい子ね。」

気付けば、腕の中に居るのは、怪しげな笑みを浮かべた悪魔。

恐怖で身を引こうとしたが、彼は俺を強く掴んで離さなかった。

「お前は、実験台だ。」

「……っ。」

何も、言えない。
何も、出来ない。

違う。
俺は実験台じゃない。

俺は――天使なんだ。

こんな、悪魔の躰なんて、力なんて、要らない。

俺の瞳から、涙が一筋、頬を伝って流れた。