天使の歌


甦る、辛い記憶。

冷たい床。
堅い鉄格子。
重い鎖。
嘲笑う声。
蔑む瞳。

(……行きたくない!!)

最後の力を振り絞り、セティは左手に、焔の神霊(みたま)を集めた。

それをリエティーに向かって放つ。

「危ないっ!!」

ディリーの叫び声に、リエティーは身を翻して、セティの攻撃を避けた。

「何よ!神力も使えるんじゃない!」

慌ててリエティーが叫んで。

ディリーとリエティーは唖然とした。

攻撃時に伸ばされた左手が力無く床に落ち、セティの躰は、みしみしと音を立てて軋んでいた。

「……っ……ぁ……。」

押さえられない悲鳴が、血と共にセティの口から溢れる。

「もしかして……天使と悪魔の血が、反発してる……?」

解っていた事だった。

神力と邪力、両方を使えば、躰の均衡が崩れる。

過去に経験し、理解してはいたが、それでもセティは神力を使ったのだ。

あの場所へ、行きたくなかったから。