それからセティは高熱に浮かされ、夢と現実の間を、彷徨った。

過去の辛い記憶が現れる悪夢と、
自分の中で、2つの何かが争っているような苦しい現実。

それでもセティは、必死に意識を掴み、ディリーから離れようと し続けた。

何故かは解らないが、彼の直感は、ディリーが危険な人物であると告げていた。

現に彼女は、キュティの前では にこにこと人懐っこい笑顔を浮かべているのに、セティの前では彼を侮蔑する言葉を吐く。

そして。

彼女が、セティの躰を、狂わせていた。

その日もセティは、ベッドから起き上がろうとし、キュティが町へ出掛けて居ない事を良い事に、ディリーは力を使った。

「……うっ……。」

起き上がろうと した胸を手で押され、ベッドに頭を叩き付けられる。

「寝てなさいって言ってるでしょ?」

ディリーの躰から放たれる、どす黒いオーラ。

セティは それに、精一杯 立ち向かった。

「……だ、れが、お前、の言う事なんか……。」

ディリーがセティの胸に充てた手に力を込める。

「……ぐっ……あああぁぁ!!」

心臓に、何かで突き破られたかのような激痛が走り、セティは絶叫した。