「優花、大丈夫?」

静かな廊下を歩く。……ちょっと、薄暗い。

「ぅっ…ん。全然大丈夫…かな?」

「ハハッ。そうだよね…。意外と怖かったもんね」

「うん。……藍の話が一番怖かったけど…」

「あぁ、血だらけの女の話?」

「言わないでよ……」

僕の腕で小さくまとまって、涙目に僕を見てくる…。何か…もう…。一緒の部屋じゃ危険な感じがするよ…。

「……ふっ。優花は、本当に怖がりだね」

「本当に怖いんだもん……。藍、ありがとう。……もう、大丈夫だよ?部屋に着いたから」

「大丈夫。僕が、ベットまで運んであげるから…」

僕は、片手で鍵を開けて部屋に入る。

「優花は、右と左、どっちが良い?」

「藍が好きな方選んで良いよ?」

……じゃあ、右の方が寒いから……。

「僕、右行くよ」

「分かった。じゃあ私、左」

「うん。……よいしょっと……。寒くない?大丈夫?」

「大丈夫だよ。ありがとう…」

ニコッと優花が笑う。僕は、頭を撫でて部屋の電気を消す。

「お休み。優花」

「…お休み。藍」

僕は、メガネを外して右のベットに入る。
……結構寒いな……。

優花のベットから、モゾモゾっと布団の音が聞こえる。

「……………」

……優花のたてる音の一つ一つでも…僕は凄いドキドキするんだ……。

「ぁっ……藍……。起きてる?」

優花が、僕のベットの近くに来て、ベットのハジに、指をちょっこっと乗せて顔を覗かせる。 
「……ん?どうしたの?」

「ぁの…。嫌なら、良いんだけど……」

「……何?どうしたの?」

「……一緒に寝て良い?」

「………ぶっ。………えっ!?」

えっ!?えっ!?『……一緒に寝て良い?』って?……僕の聞き間違え?

「ぇっと……。ダメかな?」

ちょっ、優花…ワザとやってますか!?ダメな訳無いじゃん!ナイじゃん!

「……いや、ぜっ、全然大丈夫だよ。うん。…おいで?」

「ぇっ?良いの?」

「うん。……良いよ」

「ありがとう…。藍…」

優花が、ゆっくり僕のベットの布団を捲って入ってくる。優花と、同時に少しヒンヤリした空気と、僕の心臓の鼓動が一緒にくる…。

「……………」

「……藍…お休み」

「おっ、おゃ……お休み……」

ちょっと、あんまりコッチ来ないでよ!僕の心臓を壊す気ですか?優花は……!!

お願いだから、くっつかないでー。冷たくて小さい手で僕の手を握らないでー。僕、眠れないじゃん!

「藍の手……暖かいね。……安心する」

「……ハハッ。ありがとう……」

本当に……僕、今死んでも良い。てか、このまま幸せの気持ちのまま死にたい……。

「……藍ってさ。優しいよね……。私や、生徒会委員の皆が困ってると、助けたりしてくれるし…」

「……そんな事無いよ」

「そんな事有るよ。藍は、優しくて、格好いいよ……」

「ありがとう…。優花…」

「……うん。……私、藍の事大好きだよ…。優しくて、いつも……助けてくれる藍が。……大好き……」

「あっ…ありがとう」

何か、面と向かって言われると照れるし恥ずかしいよ……。

でも、その反面、嬉しくて、嬉しくて……。
僕、この大好きを、友達としてじゃなくて…。
一人の男として大好きって言わせたい。
いや、絶対に……言わせてやる……。

「スースー……」

あっ、優花寝た……。さて、僕も寝ますか。優花と手繋ながら…ね。

「お休み…。優花…」

チュッと、優花の頬にキスをする。

………唇に出来る日は、……会長が、あの行動をしてからだ……。楽しみにしてよっと……。優花と…唇でキス出来る日を……。