「─────で、その女は、男の子に聞いたんだよ。『君のお母さんは誰?』って…。そしたら、その男の子は、こう言ったんだよ……」

隣で、優花が体育座りをしている。ちゃんと顔も出してる。でも、体が震えていて、今にも倒れそうだ。

「「……………」」

「……お前だよぉぉぉぉ!!!!」

風真は、急に立ち上がり優花の方に早歩きで近寄る。優花は、ビックリして立ち上がって僕達の周りを走り回る。風真も、優花を追い掛け回す。

「ぅわぁぁぁーん!!!」

「お前だよぉぉぉぉ!!」

風真、完全に優花の反応面白がってる…。

「ちょっ、風真もうヤメな!!」

蓮が、風真を止める。会長の、おやじ座りの中に優花が入っていく。優花は、会長に抱き付いて泣きじゃくる。

「ぅわぁぁぁん!怖かったぁぁぁ……」

「…………」

会長は、黙って優花の背中をさする。風真は、凄い笑ってた。

「ハハッ。お前、ビビり過ぎだし…」

「うぅ……。怖い……。トイレに行けないよぉ…」

「優花、これは作り話だから気にすんな」

風真が、少し笑いながら優花に話し掛ける。

「ぅっ……。……ぅん」

優花は、会長から離れない。……未だに、凄い体が震えてた。

「おぃ、泣き止んだか?優花…?」

「………はぃ」

優花が、震える足でゆっくり立ち上がる。会長は、優花の体を支える。

「優花、ゆっくりで良いからコッチおいで?」

「ありがとう…。藍…」

「もう、本当に風真は良く優花の事イジメるね…。優花の身にも…なりなよ……」

優花が半泣き状態で僕の所に来る。僕は、優花を抱き締める感じで座る。

「もぅ、風真のせいで優花が泣き止まないじゃん……。大丈夫?」

「ぅう……うん。……大、丈夫……」

「じゃあ、怖い話続けるね…」

「次、誰?」

「じゃあ、ジャンケンで負けた人から」

「「ジャンケンポン」」

「……あっ、俺か……」

要が負ける…。要って怖い話あるの?

「えーと。ある所に──────」

「「……………」」

「─────だとさ……」

「怖いよ……。要君の話鳥肌止まらないよ…」

「お前、無表情で話していくから怖ぇよ…」

「……俺の顔はもう、変えられないの。しょうがないだろ…。無表情って言ったって、この顔がいつもの俺なんだから……」

「はいはい。そうですね…」

「次は、誰?」

と、蓮が話を進めていく…。怖い話大会が始まって、二時間位経った頃…。蓮が、部屋の灯りを点ける。

「優ー花?大丈夫?立てる?」

僕が、優花を支えながら、ゆっくり立つ。

「だっ……大丈夫……。アハハ……」

「お前、本当に大丈夫か?」

「ぅっ……うん………」

足が凄い震えてる。……確かに、ちょっと怖かったね…。会長なんか、途中で叫び出すし……。有る意味、僕はそれが一番怖かったね…。

「これじゃあ、歩けないね…。……よっ…と」

僕は、優花をお姫様抱っこをする。改めて、優花の体を触れると、本当にブルブルと小刻みに震えてた。

「……ほら、もう遅いし皆、自分の部屋に戻ると良いよ」

蓮が、笑顔で立ち上がる。目の奥笑って無いけど……。

「ほら、直樹立って!」 

雪斗が、直樹の頭をツツく。

「雪斗ぉ、俺眠い…。おぶって…」

「無理だよ。僕、直樹を持てる位の筋肉無いから」

「えぇ…」

直樹が、目を擦りながら立つ。相変わらず、身長が高くて殴りたくなる……。

「……じゃ、お休み。皆」

蓮が部屋のドアを開け、笑顔で手を振る。

「「お休み」なさい」

僕達の部屋は、一番奥。そんなに、遠く無いけどね。