「それだから、直樹の好きな人は直樹の事を見てくれないんだよ」

「抱きついても文句言わないけどね」

直樹が勝ち誇った顔で、コッチを見る。

「僕は、間接キスしたし」

「なっ、何だと?!」

「ふんっ。直樹より、僕の方が勝ってるね」

「ん?藍と直樹君、何か勝負してるの?」

優花が苺ミルクを飲み干してから聞いてくる。

「ちょっとね」

「あんまり、喧嘩したらダメだよ」

「うん。大丈夫だよ。喧嘩は、多分しないから」

僕が優花の頭を撫でると、いつも優花はニッコリ微笑む。僕は、この笑顔が大好き。元々大きい目が細くなって、口角が上がる。その笑顔は、たまらなく可愛い。

「藍?」

「なっ……何?」

「顔赤いよ?風邪?」

「……違うよ」

優花は、無意識に僕をドキドキさせる事を言う。僕の顔が赤い理由?そんなの分かりきってる。優花の笑顔にドキドキしているから。

「「「おはよう」」」

「………はよ」

一気に、要と蓮と雪斗と風真が来る。

「おはよう」

優花は、皆に向かって挨拶する。………僕は凄い小さい男だ。それだけで、嫉妬する。

「あれ?会長は?なんで、会長いないの?」

あっ、確かに。直樹の言う通りで会長がいない。会長が遅刻って無いよ。

「おはよう」

あっ、噂すれば人は来る。会長のお出ましだ。

「「「おはようございます」」」

皆が、声を揃える。何故か、僕達は、声が勝手に揃うんだ。

「じゃあ、行こうか」

会長が指を指す方に大きい車が一台あった。

「おっ、大きいですね。……あっ、おはようございます」

優花が、目の前の大きな車に興奮気味。運転手の人にも、ちゃんと挨拶してる。

「早く乗れ。幼児体型」

「風真君、そう言う事言わないでって!!」

優花が、頬を膨らまして怒る。………ふっ、優花って迫力無いな…。まぁ、そこが可愛いけどさ。

「優花、もう乗ろう?」

そう言ったら、優花はニッコリ笑う。

「うん。分かった」

「ちょっと、藍が優花ちゃんの隣なの?」

「…………悪い?」

「それは、ズルいよー。俺だって優花ちゃんの隣に座りたい!」

「じゃあ、ジャンケンで。どう?」

蓮が一番簡単な決め方を皆に提案する。

「一番目が、優花ちゃんの隣。二番目が、優花ちゃんの前。三番目が、優花ちゃんの斜め前。一位から、三位は納得出来る席。……これで、どう?」

蓮が皆が燃えるような設定を決める。一人を除いて。会長も、一応ジャンケンするらしい。……ジャンケンの神様…。お願いします。優花の隣に座らせて下さい………!!!!

「「「最初はグー。ジャンケンポン!!」」」

「藍、見て見て。景色超綺麗だよ」

優花が、僕の隣でハシャぐ。どうやら、僕はジャンケンの神様に恵まれてるらしい。一発目で一人勝ちした。

その時の喜びと言ったら、言葉に出来ない……。僕の次に勝ったのは、風真。三番目が、雪斗。

てか、風真の顔ウケる。凄い、緊張してるのが丸分かり。意外に風真って草食系なんだよね。見かけによらず。

「風真君?どうしたの?具合悪いの?」

優花が、風真を心配する。だって、風真、本当に顔真っ赤なの。お風呂に、長時間入った時みたく。

「ぅっ、うるせぇ……」

風真が顔真っ赤になりながら、優花の事を見ずに言う。でも、風真が顔真っ赤にする理由は、分からないでも無い。

だって、優花のワンピース、ちょっと短いというか、脚を開いたら完全にパンツが見えるんじゃないかって位に。立ってたら、普通の長さなのに座ると短くなる。

「心配してあげてるのにー。風真君は酷いな」

「お前、そんな事言ってると怖い話の時に、とびっきりに怖い話してやるからな」

「やっ、ヤメてよ。私、夜眠れなくなるじゃん……」

それは、それで僕的には嬉しいけどね。

「じゃあ、僕が傍にいてあげるよ。怖くなったら、言ってね。優花」

「ありがとう。藍」

「ふんっ……」

あっ、風真が拗ねた。分かりやす過ぎだよ…。

「おい、もう着くぞ」

会長が車の窓を覗き込みながら皆に伝える。