春風が舞う季節。この季節を何回も繰り返してる。何回も繰り返してくたび、僕の好きな人は綺麗に成長していく。

なのに、恋愛に関しては全然成長しない。いい加減成長しないかな?

「鈍感過ぎて困るな…」

静かな夜道に僕の独り言だけが聞こえる。優花を抱きしめてる間…僕の心臓はバクバクだったのを覚えてる。口から心臓が飛び出るんじゃないかって位。顔が熱くて、呼吸は荒れるし。

でも、優花は僕に恋愛的な好意を持ってないと思う。てか、絶対に。抱きしめても顔は赤くならないし、大切って言っても幼なじみとしてって、とらえるし……。

僕は小さい頃から好きなのに。全然気づいてくれない…。初恋もまだって……。純粋なのか、今は自分で精一杯なのか。

でも、僕は優花に恋愛的な好意を持たれなくても良い。優花が僕のそばに居てくれればそれで、充分。

「って…好きなのに、それはあるわけ無いよ」

本音を言えば、優花は僕だけの物にしたい。皆に好かれるのはちょっと嫌だ。それに僕が知ってる限り、二人も優花の事が好きって男の子がいる。

優花が好きになるのは僕だけであって欲しい。優花が他の誰かの物になるなんて、考えれない…。

優花の初めては全部僕がいい。
全部僕が優花の初めてになりたい。
初めて、好きって言うのも。
初めて、付き合う人も。
初めて、デート行く人も。
初めて、キスする人も。
初めて、夜を過ごす人も。
全部優花の初めては僕がいい。

ちょっと、気持ち悪いかも知れないケド、僕の本音はこれだ。
優花の未来には、誰が隣にいるのかな?
僕?藍?風真?蓮?直樹?要?会長?それとも、まだ知らない人?

毎日、毎日。不安でしょうがない。優花が、もし、僕に好きな人出来たって言ったら傷つけるのを覚悟で、嫌われるのを覚悟して襲う。
………なーんてね。優花に嫌われるのが僕にとって死ぬ位に辛い。

そんな事僕に出来るわけ無いよ……。優花の笑顔を壊す事なんて出来るわけ無い。

あぁー。直樹みたいに、なりたいな。好きな女の子にサラッと好き、好き。愛してる。って言える直樹になりたい。
地味に憧れてる。直樹に。格好良くて、女の子にモテて、口が上手で、誘い方が上手な直樹に。

羨ましいなぁ……。優花に告白したい…。ケド、振られるのが怖い。今の関係が自分で壊すなんて事したくない。

「ありゃ…。もう着いちゃった」

ガチャと、鍵を開ける。

「おかえりー」

「ただいま。母さん」

母さんがリビングから顔を覗かせる。

「遅かったわね?何してたの?」

「何も?」

「優花ちゃんの事襲ってたんじゃないの?」

母さんが怖い目で僕を睨む。

「そんな事しないって。ちょっと考え事してたダケだよ」

「なら良いけど……。早く、お風呂入りなさい」

「分かった」

僕はお風呂に入ってても、同じ事を考えてた。
考えすぎてのぼせて、部屋に直行した。
ベットにダイブする。そのまま、僕は夢の世界に行った。