「おばさん、終わりました」

「優花ちゃん、ありがとう。本当に助かったわ」

「いえいえ」

「ふふっ。……あっ、もう、こんな時間。雪斗、優花ちゃんを家まで送ってあげなさい」

「分かったー。優花、送るから、もう行こ」

「ありがとう。お邪魔しました」

私は帰る準備をして、リビングから出る。

「また、来てね~」

おばさんが手を振る。ペコッとお辞儀をする。

「うわ。もう、真っ暗だね」

「うっ、うん。雪斗、先に行かないでね…」

ぁああ。もう、どうしよ。幽霊とか出て来たらどうしよ。まず、こんばんは?いや、違う?じゃあ、呪わないで下さい?違うわ!もう、混乱しちゃうよ……。

「大丈夫だって。先に行かないから」

その時、ガサガサっと何かが揺れた。

「キャアァァ……」

「優花、大丈夫だよ。僕がちゃんと守るから…」

雪斗が大人に見えた。ついこの間は雷でビビってた雪斗が…。……なっ、何か……出て来た。……出て来た?!人影?幽霊?

「…………?何あれ。カッパ?雨降って無いのに?」

「本当だ。カッパだ……。良かった…優花を守れなかったらどうしよって、ずっと考えてた…」

「ごっ、ごめん。雪斗ごめん…」

「大丈夫だよ。僕が勝手に考えてただけだから」

「でも……。……ありがとう」

無駄に謝っても変な空気になるし。

「うん……。………ぇっ?」

「ちょっと、怖いから。ダメだった?」

私は安心したくて雪斗の手を握った。私より、大きな手。温かくて、ゴツゴツしてる。
小さい頃と、全然違う。

「ぃや。全然ダメじゃない…。ってか、逆に嬉しいし…。って……いや、ぇっと」

「良かった。ダメじゃないんなら良いんだ」

「うん……」

返事をした雪斗の顔がまた、真っ赤になってた。電柱の光じゃ、あまり分からないけど。でも、確かに真っ赤だった。

「愛美、大丈夫かな?喧嘩…。心配だな…」

「僕も心配。怪我してないと良いけど…。愛美は強いけど、やっぱり心配だよね…」

「うん…」

「……………」

「……………」
「……でも、信じてあげよ?勝てるって」

「そうだね…。雪斗の言うとおり」

やっぱり、雪斗は大人になってる。

「………あっ。着いちゃった…」

「ぇっ?ダメだったの…?」

「いや、全然なんでもない」

「そう?…雪斗ありがとう。また明日ね?バイバイ」

「…………」

雪斗が私の腕を引っ張って私は雪斗に抱きしめられる……。

「雪……斗?」

「あんまり…生徒会の皆と仲良くしないで?」

「何で…?」

「優花が皆の物になってほしくない。優花は、僕の大切な人だから、嫌なんだ…」

「私の大切な人は雪斗と愛美だよ。皆の物にならないよ?大丈夫だから」

春風が生暖かい。夏へと段々近づいていく。夏の前にゴールデンウイーク。今年のゴールデンウイークは、何しようかな……?

「…………」

「………?」

雪斗どうしたんだろう?

「優花って本当に鈍感だよね?いや、天然なのかな?恋愛に関してさ…」

「まぁ、初恋まだだし。恋愛が何か分からないから。どれが友達としての好意で何が恋愛としての好意か分からない」

「……ふーん。ハハッ。優花の将来が心配だよ…」

雪斗が私の頭の上で苦笑いをする。

「余計なお世話よ。……ゴールデンウイーク一緒に遊ぼうね?愛美と三人で」

「でも、生徒会委員は仕事あるらしいよ?」

「ぇっ~…。……まぁ、いっかぁ……」

一人になるよりマシだよ…。一人は怖い。一人だと余計な事を考えてしまう。だから、一人は嫌い。テレビの音も出来るだけ大きくする…。

「……ごめん、優花。……引き止めちゃって」

雪斗は私から離れる。頭を撫でて雪斗は笑う。

「大丈夫だよ」

「ありがとう。……優花、また明日!」

「また明日」

私は雪斗が見えなくなるまで手を振った。雪斗が居なくなったのを確認して自分の家に入る。
私は、その後お風呂に入り、布団に入って寝た。今日のご飯は美味しかったなぁと思いながら……。