「ん?何?」

「何でも無いよ」

「そっか。はい、入って」

「お邪魔します…」

私がお邪魔します…と言った途端ドタドタッと、走ってくる音が聞こえた。

急に目の前が暗くなったと思ったら、雪斗のお母さんが私に抱きついてきた…。

「優花ちゃん、久しぶり~。まぁ、まぁ、こんなに綺麗になって。泉に、似てきたわね~」

泉とは、私のお母さん。お母さんと、雪斗のお母さんは幼なじみ。
しかも、私のお父さんと雪斗のお父さんも幼なじみ同士だ。凄いような気がする。
てか、ぐるじぃ~………。

「母さん、優花が死んじゃう!優花から離れてよ!」

「あら、ごめんなさい。あまりにも可愛いから」

「全然大丈夫です」

私はニコッと笑う。誰かに、好かれるのは嬉しい。嬉しくないって人はいないと思う。

「本当に可愛いわね~。おばさん、男だったら、惚れちゃうわぁ。優花ちゃん、高校でモテるでしょ」

ムフフっと、口に手を当ててニヤケる。もう、片方の手で私の頭を優しく撫でる。

「そんな事無いですよ。私、モテないです…」

自分で言って傷つく私…。

「いや、それは無いわ。クラスに数人は優花ちゃんの事が好きって男の子いるわよ」

「いないです、いないです。私以外に綺麗で可愛い女の子沢山いるんで」

私は自分の手と頭を振る。し過ぎてクラッとくる。

「そんな事無い…」

「母さん、お腹すいた」

雪斗がおばさんの声を遮る。

「はい、はい。雪斗はワガママねぇ~。お母さん悲しいわ」

泣くふりをして、リビングに入って行くおばさん。本当に、楽しい人だな。おばさんこそ、絶対にモテてたよな…。

「優花、早く行こ」

「あっ、ちょっ、待って…キャアァ」

慌てすぎてバランスを崩す私。次にくる痛みを耐えるために、全身に力をいれる。
でも、次にきたのは、ずっと小さい頃から変わってない雪斗の香りだった。

「優花、大丈夫?」

「だいひょうぶ…。あぁ、ビックリした。ありがとう、雪斗」

「うん。優花が怪我したら、悲しいからね。愛美にも殺られるし」

アハハッと苦笑いする雪斗。いつから、私は雪斗を見上げて話すようになったんだろ?

「そうたね。でも、ありがとう」

「うん!」

「優花ちゃーん。雪斗ー。ご飯出来たわよ~」
「「はーい」」

私と雪斗は一緒にリビングに入って行った。リビングには、美味しい香りが広がっていた。
テーブルに置いてある数々の料理は本当に美味しそうな物ばかり。

「たっくさん、食べてね~」

「はい。…いただきます」

おばさんが作った肉じゃがを口に含む。口の中に懐かしい味が広がる。……私のお母さんと、同じ味…。

「泉が作った時と同じ味がするでしょう?その、肉じゃがは私と泉のオリジナルの調味料を入れて作っているの」

「はい。全く同じです…。美味しいです」

「良かった。もっと、もっと沢山食べてね!」

「はい」

私はこの後、おばさんがビックリしてるんじゃないかって位沢山食べた。美味しくて、美味しくて。お母さんの味に似てて…。

「「ごちそうさまでした」」

ぅうぅぅ……。さすがに食べ過ぎた…。

「沢山食べたね~。おばさん嬉しいわ」

ニコニコとおばさんがお皿を片付ける。

「あっ。私、手伝います。おばさんは座ってて下さい。沢山お料理を作ってお疲れでしょうし」

「あら?本当に?……お言葉に甘えて良いかしら?」

「はい。大丈夫です」

「ありがとう。優花ちゃん」

返事の変わりに笑顔を作った。私はお皿をキッチンの食器洗いの所に持って行く。

「よし、頑張るぞぉ~!」

丁寧に優しく洗う。毎日洗ってるから、慣れた。二年前は全然だったのにね…。慣れって凄い。

半分位が終わった時に凄い視線を感じた。視線の先を見ると雪斗と目が合った。ニコッと雪斗に微笑むと雪斗は視線を逸らした。…頬が赤くなっていた。どうしたんだろう?

「…………?」

まぁ、気にせず食器を洗いましょー。私は黙々と食器を洗う。よし、終わった!