酔い潰れた小柳さんをタクシーに押し込め、なんとか住所を聞き出して運転手に代金を握らせてようやく帰した。

今日小柳さんが飲んだ会計分とタクシー代は後で請求させてもらうことにする。


菜月にはいつもの酒をいつも通り一杯だけしか出していない。

昨日のあの乱れっぷりを見る限り、絶対こいつには大酒飲ませたくない。他の男の前で脱いだりしたらなんて考えたくもねーな。


その菜月はと言えば。


「…あのさ、うちのお父さん、普通のサラリーマンだから日曜日が休みなんだ。だから」

「分かった。今度の日曜日に俺が挨拶に行けるよう、話しておいてくれる?ちゃんとスーツ着てくから」

「うん…。ごめんね、昨日私が酔ったせいで色んな迷惑かけちゃった……」


菜月は申し訳なさげに俯いた。

昨日のアレは迷惑どころか大歓迎なんだけど。二人きりの時になら乱れてくれて構わないけど。


まぁ、親に連絡させなかった…というか連絡させるのを忘れてたのは、俺も迂闊だったけどな。


「それより鍵。明日から毎日でも使ってくれて良いけど?」


悄気る菜月をみかねて話題を替えた。


「毎日行っても迷惑じゃないの?」


だからなんでそうなるよ?


「俺が来てほしいと思って渡してんだから、有効に使えって。俺さ、飯なんか殆どコンビニ飯か食わないかなんだよ。帰った時に温かい手料理なんかあれば、すげー癒される」


買ってきた惣菜だの弁当だのを一人で食うのほど、侘しいもんはない。


それもあるが、菜月が昨日作った料理がやたらと旨かったってのもある。こういう料理が上手い女の子ってのには男は弱いもんだしな。


おまけに体の相性も良かったし。


今は俺の中でも菜月の存在が、近くにいて安らげると感じるまでに大きく膨らんでいる。



今まで俺が経験してきたのが、下心丸出しの[恋]なら、菜月に対して抱く感情は[愛]なのかも知れない。


会ってすぐホテルに行って、ヤることヤって…なんて、そんな事したくない。


菜月と一緒なら、一歩も部屋から出ないでDVDを一日中観てても飽きないだろうし、二人で仲良く台所で料理を作るのも楽しそうだ。


その前にまず、菜月の両親に挨拶をしに行かなきゃなんねーな。