資料室はこのビルの二階下にある。


ビル自体は龍崎グループの持ちビルで、この建物まるまる龍崎グループの関係会社が入っているが、


その全部が俺の名義になっている。


龍崎グループを設立した年の俺の誕生日に、会長からプレゼントされた。


ビルまるまる一つプレゼントってどんな贈り物だよ。


東京の一等地に土地を買い、さらには建物の費用も全部会長持ちだ。


数百億はくだらないだろうその買い物に、会長は一瞬の躊躇もなかった。


ちょっと驚いたが、そんな大胆なことを簡単にやってのけるのが



会長だ。



『税金対策でお前の名義にしてある。


お前の好きにするがいい』



なんてこれまた男前な台詞に、俺が女だったら―――きっと惚れてるに違いないな。


と思ったこともある。


以来、俺は二十数名居る事務員(会計士、税理士……もちろん全員ヤクザ)と、この事務所を守っている。


その建て物のワンフロアを贅沢に使った資料室は、ぎっしりと経理資料のファイルで埋まっている。


資料は年代別、種類別に揃えて棚に陳列してあるから探すのは割と簡単だ。


俺は目当ての資料が保管してある棚を目で追っていると





一番高い場所にあるじゃねぇか。


あれじゃ俺でもさすがに無理だな。


誰だよ、あんなところに資料保管したやつぁ。


仕方なしに脚立をきょろきょろと探していると









「あっれ~??組長ぉ?めっずらしー


資料探しですかぁ??」







すぐ背後でいつもの間の抜けた声が聞こえてきて


俺は


ガクリ、肩を落とした。