ライラックをあなたに…



2人で食べる夕食。

何てこと無い時間だけど、目の前に彼がいるだけで美味しさが2倍増しになった気がする。



その後、交代でお風呂に入り、暗黙の了解のようにリビングにいる2人。


彼は大きなスーツケースを広げ、何やら物色中。

そんな彼をソファに座り眺めていると。



「あっ、あったあった。これこれ」

「ん?」


彼はお目当ての物を探し当てたようだ。

自然とその物に視線が留まると……。


「はい、寿々さん。………お土産」

「へ?」

「寿々さんに似合うと思って」


彼は無邪気な笑顔でそれを差し出した。


「ありがと。………開けていい?」

「もちろん!」


麻で出来た袋の中には、色鮮やかなバッグと小豆色したブレスレットが入っていた。


「このバッグはパナマ・クナ族のモラ刺繍で作られたもので、こっちのブレスレットはタグア椰子の実で作られたものなんだ」

「へぇ~」

「タグアの実は植物の象牙と言われ質感が良く似てるから、最近は象牙の密漁に一役買ってるんだよね~」

「へぇ~、凄いんだね」



彼が選んでくれたもの。

お日様の匂いがする。

手作りというのも嬉しかった。


彼の優しさが品物から溢れて来る。


「ありがと。大事に使うね」

「ん~」


彼は国際研究チームで『有機農法』の研究で、大きな成果を挙げたらしい。

来年の春に行われる国際学会で発表する事が決まったと話してくれた。

そんな凄い事を成し遂げた彼。

私にはもったいないくらいの人だよ。