“ねえねえそこのお姉様方、その人普段は寝癖のボサボサヘアに黒縁眼鏡、イケメンとは程遠い残念な風貌なんですよ”ってね。




晴に見惚れてるお姉様達は知らない、晴の秘密。

あたしは知ってるもんね!



ちょっと優越感に浸って1人でニヤニヤ笑っていると、背中に指す様な視線を感じてそちらを振り向いた。





「あ、晴……」


「怪しい行動取ってると、警察に通報するぞ」





そこには呆れた顔で立っている晴がいた。


いつの間にか晴はあたしの存在に気付いて外に出てきていたみたいで。





「すみません……怪しいものではないです。バイト断りに来ました」


「…ふーん」





変なとこを見られたあたしはバツが悪くて敬語を使う始末。


そんなあたしに、アゴで“入れ”と合図してくる晴。





「は、はい」





晴の後について店に入ると、店長と、トウヤさんとリツキさんの「いらっしゃいませ」という声が聞こえてきた。



それぞれに顔を向けると、みなさんもどうやらあたしの奇行に気付いてたみたいで、




店長はニヤニヤ笑ってて、

トウヤさんは震えるほど笑ってて、

リツキさんは、フッと笑いながら、縁なし眼鏡をクイッとした。