「あのさ晴!バイトのことどう思う?」





さっき、男子に変身したあたしを見ても何にも言わなかった晴の意見が聞きたくなった。

あたしの質問に、晴の足がピタッと止まる。

くるっとこちらを振り向いて言った。





「やめてる方が懸命だと思う」





真剣な表情の晴に、怒られてる様に感じて一瞬ドキッとした。





「…どうして、そう思うの?」





でも、あたしがそう尋ねた瞬間、表情をコロッと変え、唇の端を上げてイジワルな顔に変わる。





「わかんねぇかな?ここは“イケメン”カフェなんだって……」


「……」





君は…自分はイケメンに化けれるけど、あたしには無理と言いたいのだね?


そんなこと言われて悔しいけれど、それ以上に悔しいのは何も言い返せない自分。




だって、晴は完璧にイケメンに変身しちゃってるもん…。

肩を落とすあたし。

そんなあたしから不自然に目を逸らせた晴がボソっと呟いた。





「わざわざ男に化けなくてもいいだろ?」


「え?」


「………いや、何でもねぇよ。じゃぁまたな」


「あ、う、うん…」





晴はそのままあたしに背を向けて、手をヒラヒラさせたまま店に戻って行ってしまった。




ん?

バイトは反対ってことかー?








晴の秘密を知ってしまったこの日から、あたしの人生が少しずつ変わり始める──