「大丈夫大丈夫、女に見えなきゃいいんだろ?リツキ、制服と“アレ”出して」


「はい」





店長の支持にしたがって無表情のリツキさんが出してきたのは、カフェの制服と……。





「えっ!?」


「あ!やっぱり俺の目に狂いはねぇだろ?桃佳ちゃん!可愛い男子になってるよ」


「……」





頭に感じる違和感は、リツキさんがあたしに被せたブラウンヘアのメンズウイッグ。


ハンガーに掛かった晴とお揃いのカフェの制服はリツキさんによってあたしの体にあてがわれてる。





「これ?あたし?」





目の前の大きな鏡に自分を映せば、男の子に見えなくもない自分が映っててびっくりした。


おしゃれなヘアスタイルのウイッグのせいか、いつもの女のあたしよりあかぬけて見える。


晴を見上げると、少し驚いた顔をしながらあたしの姿を見ていた。





「ちょっと!みんな早く店に戻って来いよ!俺1人じゃ回せないって!それと店長、オーダーいっぱい溜まってますから」





この部屋の扉が開いて顔を見せたのはさっき店の中で会ったセクハライケメン。

たしか名前はトウヤさん。





「あれ?バイト決まったの?店長が言ってたイメージにぴったりの子だね。そういや、さっきの無銭飲食の子ってもう裏口から帰ったの?…って、お客さんが呼んでるよ!俺、戻るから、みんなも早く戻ってきてよ!」





店から「トウヤくーん。まだー?」と甘い呼び声がしたのに気付くとトウヤさんは慌てて店に戻っていった。