走って、走って…

信号待ちすらもどかしくて。



祐樹先輩との待ち合わせ場所に向かうあたしは必死だった。

指示された港は、プレシャスや駅があるのとは反対方向。




この時間だったら、祐樹先輩は学校から家に向かってる途中か、もう帰宅してる時間。


だから、どう考えたってあたしの方が先に指示された場所に着く。


それなのに、あたしは、早く早くという思いにかられて必死に走っていた。





「はぁ……はぁ…」




港に着いた頃には、日が低くなり始めて、空がオレンジになっていた。


額の汗を拭いながら、息を大きく吸い込んで、暴れてる心臓を落ち着かせる。




周りを見渡すけれど、思ったより人気の無いこの場所に、少し不安な気持ちが生まれてくる。


だから、背後から急に掴まれた肩に驚いて、体を思いっきりビクつかせてしまった。