【完】ヒミツの恋を君と。

「何の騒ぎだ?」




そんな声と共に、厨房の奥から顔を覗かせたのは、年の頃20代後半のこれまたイケメン。


あごヒゲの生えてる、アラサーイケメン。




「店長!このお客様が無銭飲食ですので、ちょっと裏で説教してきます」


「…○…☆♪Yz×!?!?」




さっきよりさらに口を塞ぐ手に力が込められ、声にならない音だけが漏れる。




無銭飲食ってなに───???

まだ何にも食べてないって!




「おぅ!わかった」




アラサーイケメン店長がそう言った瞬間、晴はあたしを引きずって歩き始めた。


そのまま晴に連れて来られたのは、カフェの奥にある、店の休憩所件更衣室らしき所。


部屋の扉が閉められて、周りの目がなくなって2人きりになった。




さっきまでの喧騒とは違い、ここは静か。




あたしの背中の方にいる晴の顔は、まだ口を塞がれた状態だから見えない。





本当は今、イケメンバージョンな晴なんだけど、その顔が見えないから、あたしの頭に浮かぶのは、毎朝屋上で見てたボサボサ頭に黒縁眼鏡の晴の顔。





急に意識があたしの口を塞ぐ晴の手に集中してしまう。

晴の手の温もりを口元に感じる。




なんか顔熱くなってきた。

頭もボーっとする。




これは、いつまでも口を塞がれて酸欠になってるせい?だよね?