晴…。



あたしに笑いかけてくれた時も、

抱きしめてくれた時も、

あたしの髪の中にその指をかき入れた時も、

キスしてくれた時も、

素肌に触れてくれた時も、




あたしの中に美月先輩を見てた?




涙がどんどん零れ落ちて、屋上の床のコンクリートに落ちていく。


思い出が全部、灰色に塗り替えられる気がした。





「……っ…うっ…」





キスする前、晴は『お前が悪い』って言って苦しそうな顔をした。


触れ合った時、急に電気がついた後、あたしの顔を見て驚いた顔をした。



今、その理由が全部分かった気がしたよ…。




頬を伝う涙を、手の甲で乱暴に拭った。



まだ、眠りの中にいる晴。

深い眠りの中にいる晴は、何をしても起きないのは知ってる。





「ねぇ、晴……あたし、美月先輩じゃないよ……」





喋りかけても、

多分……キスしても……。



あたし最低なことをしてる。

でも、もう一度だけどうしても触れたくなったの。





「ごめんね、晴…」





あたしは晴に触れるか触れないかのキスをして、屋上から出て行った。