「また、眼鏡かけたまま寝てるし…」



晴が寝てるベンチの前に、晴に背を向ける姿勢で座った。


晴が寝てる時の、あたしの定位置。




「どんなにテストが良くても、こんなとこでサボってちゃ、評価下がっちゃうよ?」




体操座りをして空に向かって呟く独り言は、風が瞬く間に消し去ってくれる。


晴の耳には届かない。




「美月先輩と約束したんでしょ?指定校…取って、東京行かなきゃ…」




そこまで言って、自分の声が震えてるのに気が付いた。



晴、あたしね。

塔子に言われる前から、実は少し思ってた。


あたしも再来年、東京の大学に進学しようかな。なーんて。



ホントバカだわあたし。



思わずフッと笑いが零れて。

同時に、涙も零れ落ちた。




ねぇ晴、あたしと美月先輩って似てるの?


振り向いて晴の寝顔を見つめた。



初めて出会った日。

あたしが“晴”の名前に“春”を重ねたように、晴も“あたし”に“美月先輩”を重ねてた?





「バカだな…晴。似てるのは髪形だけでしょうが?」





そう言えば、晴にも同じようなこと言われたな。



『お前もめちゃくちゃだよな。あいつと俺って似てるの名前だけだろ?顔の系統も違うし、性格も全然違うんじゃねぇの?』



初めて会った日、あたし達は同じようなことを考えてたんだね?






でも、あたしの中ではすぐに“晴”と“春”は重ならなくなってたよ。




晴のこと好きになったから──