【完】ヒミツの恋を君と。

「いやぁだーもう、トウヤくんってば!」





セクハラ店員を見上げるOLのお姉様の鼻に掛かった甘い声が店内に響く。



あのセクハラスタッフ“トウヤ”って名前なんだ。

あのお客さんの手も握ってるし……。

OLのお姉様も頬染めちゃってるし。



世の中の大半の女はどうしてイケメンが好きなのかな?

あたしにはよく分からない。



ってか、ここのカフェ普通じゃないよね?

セクハラスタッフのいる店なんて怖いよ!




帰ろう!今の内に出よう!




そう思って、右横に置いていたスクールバッグを掴んだその時、左の方から声が聞こえてきた。





「お待たせ致しました」




ビクッと体が跳ね上がった。

さっきのスタッフとは違う低音ボイス。


なんだかとっても不機嫌そうな声……。




あたしの後方から来たから全然気付かなかった。





「す、す、すみません……もう出ますっ!」




そう言って振り向いた瞬間、テーブルの左側に立ってる、不機嫌スタッフと目が合った。



うわっ!この人もモデル体型の超イケメン!!



大きくてキリットした目、スッと高い鼻、少しふっくらした唇。

黒髪は毛先が外向きにはねる様にスタイリングされててなんとも爽やか!




同じはねてるのでも、晴の寝癖とは大違いだなぁ。





「げっ……」





ん?今なんて?


目の前の不機嫌スタッフが聞き捨てならない声を出して、あたしから目線を逸らせた。





『げっ』って言った!

信じられない!



ちょっとちょっと!この人、あたしの顔見て『げっ』って言いましたぁぁあぁぁぁ…………だからイケメンは苦手なんだって……ん?