視線を右に移すと、いつものベンチの上で晴が気持ち良さそうに寝てる。




「戸締りしないでこんなとこで寝て…誰かに見つかったらどうするの?」




鍵を無断で拝借してるくせに。


そう呟くけど、晴は熟睡中で起きそうになかった。



最初の頃は、晴が屋上にいる間は絶対屋上側から鍵を掛けてた。


でも、あたしがここに通うようになってしばらくして、鍵を開けっぱなしにするようになった。




『閉めとかなきゃダメだよ』




いつもそう言ってるのに、晴はいつも開けたままにしててくれる。


晴は何にも言わないけれど、自分が寝てる間にあたしが来た時のためにそうしてくれてるのは分かってる。





優しい晴。

ぶっきらぼうだけど、傍若無人だけど、とても優しい晴。



その優しさに包まれて、あたしは大それた勘違いをしてしまってたみたい。





“晴はずっとあたしの傍にいてくれるかもしれない”





そんな勘違い。


バカだなぁ…あたし。