【完】ヒミツの恋を君と。

「あ、あれって…横山(よこやま)美月先輩だよね」


「え?」



あたしに抱きついたまま塔子が指差す方を見れば、美月先輩が観客席で友達と笑い合ってる。


美月先輩の顔を見るのは、あの夏祭り以来で。

心臓がドクンと跳ねた。



「あの河野祐樹先輩は嫌いだけど、横山美月先輩は、悪い人じゃなさそうなんだよねー」


「……うん」



あたしもそう思う。


美月先輩は、塔子の言うように、悪い人には見えないって言うか、むしろとても優しい、いい人に見える。



でも出来れば、あたしが嫌いになれるほど、悪い人であって欲しかったな。




「そっか、塔子が言えば説得力あるね…」


「ん……まぁ?でも、あたしの観察力だってたまには鈍ることがあるんだから、あんまり信用しないで……って、桃佳どこ行くの?」


「ちょっと屋上行ってみる」




そう塔子に言い残して、グラウンドを後にした。