頬に触れる手とか、

唇に触れる指とか、

あの日のキスとか、



『俺のだからね……』──




最近いろいろありすぎて、あたし勘違いしちゃうよ。


幸せすぎて、いろんな感覚が鈍ってしまう。



こうやって、晴が隣にいることが日常の様に思ってしまう。




でも、今だけ、今だけは、勘違いしててもいかな?


この温もりと、その横顔を独り占めしてもいいかな?





「晴、金魚ありがとう、上手いからびっくりしちゃった」


「あぁ、ガキの頃よくお祭り行ってやってたから」


「へぇ、お姉さんと?」


「いや、祐樹と」


「え……」





見上げた横顔が切なげに曇る。


その目は、過去を思い出して微笑むんでもなくて、憎んだり、恨んだりしてる鋭い目でもなくて、




切なげに揺れていた。





これ以上晴を傷つけたくない。


過去を見ないで、どこも見ないで、

今だけは、あたしと笑ってて欲しい。



そう願うのに、心から願うのに。

それ以外何も望まないのに。





神様は時々イジワルで……。






「晴くん?」



あたし達の前方から、聞き覚えのある澄んだ声が聞こえてくる。



晴と、あたしはその声の方に視線を向けた。





「……美月」


「こんなとこで会うなんて……晴くん、久しぶりだね」





本当に、どうしてこんなとこで会ってしまうのかな?


頬も、指先まで……体全部が冷えていく。