でも、あたしのこの願いは叶わないのは知ってる。


晴の東京の大学へ進学する夢が叶ったら、あたしの夢は自然と消える。



あたしが3年に上がる時には晴はもうここにはいないんだね。



でも、だからこそ、今の内にたくさんの思い出を作っておきたい。





「晴、あたしやっぱり金魚欲しい…」





急なあたしの言葉に晴はびっくりしたようにこっちを見た。





「晴のおなかが満腹になってからでいいから、さっきの金魚すくいのお店にいってもいい?」


「いいけど?…どうした急に?」


「晴とお祭りに行ったっていう思い出を持って帰りたかったから…」


「……」





食べ物は食べたらおしまいだけど、金魚はこれからもうちで元気に泳いでくれる。


思い出として金魚を連れて帰りたいって言ったら変かな?





「金魚すくい行くか」





晴があたしの手を握って立ち上がった。

振り向いた晴は、優しい笑顔だった。