【完】ヒミツの恋を君と。

お祭りは小学校以来だから、感性がその時代で止まってたよ。


今はどんなお店が出てるのかな?

わくわくしながらキョロキョロしてると、ある屋台が目に入って足を止めた。





「あ!金魚すくいとか!」





そう言いながら覗いた屋台の中、大きな入れ物の中では、たくさんのオレンジ色の金魚が所狭しと泳いでる。


小さい女の子が1匹金魚をすくい上げようとしたけど、ポイはあっけなく破れてしまって。


女の子はがっくり肩を落としてたけど、おじさんが金魚を1匹すくって女の子にプレゼントしてあげた。


紐付きの袋に入れられた金魚は、元気に泳ぎながら、笑顔の女の子に連れられていく。





「お前、金魚欲しいの?」


「…ううん…育て方が分からないし。それに金魚鉢ないし」





自分ひとり生きてくのに精一杯なのに、生き物の世話をしたいなんて、今まで考えたことない。





「やっぱ食い物にすっか」





晴がまた歩き出す。

手を引かれながらも、さっきの袋越しに見た金魚の映像が頭から離れなかった。