あたしの目の前には今日初めて出会った“はる”。




「ねぇ、“はる”って呼んでいい?」




なんとなく思った。

そうすればあたしの痛みは和らぐんじゃないかって。



河野晴は迷惑そうに薄く目を開けて、あたしの顔をジッと見つめる。

そしてまた目を閉じた。




「……勝手にすれば」


「いいの?ありがとう」




自然と顔が綻んでいくのを自分でも感じていた。

この学校に来て初めて笑えた瞬間。



やっぱり晴は優しい人なのかも知れな……。







「…あのさ、さっきからうるせぇよ?」


「あ……ごめんなさい」


「なんと呼んでくれても構わねぇから、早く寝かせてくれよ。そうじゃなきゃ俺はお前のこと“カッパ”って呼ぶから……」


「え?“カッパ”!?」


「髪形…おかっぱで、カッパ……」





言い終える前に晴の声は寝息に変わった。