【完】ヒミツの恋を君と。

「やめて…ぇ…」





力なくそう言うのが精一杯だった。


晴のこと好きだけど、こういうのは悲しすぎる。

晴はあたしのことを好きでこんな風にしてるんじゃない。





あたしに怒りをぶつけてる。
そんな感じに思える。





美月先輩の笑顔が浮かぶ。

彼女の背中に手を回した晴の姿を思い出して、じわっと涙が浮かんできた。



首筋に触れてた唇の熱が離れていく。


やめて。といいながら、触れられてたその部分が燃えるように熱い。



あたしの首筋から唇を離した晴は、上からあたしの顔をジッと見つめてた。



「お前は女だよ」


「…へ?」


「『襲うような人はいない』なんて、そんな卑下した言い方するな」


「……」





言われたことにびっくりして、その顔を見上げる。


ジッとあたしを見下ろすその目。

真剣な眼差しに心臓が跳ねる。


晴が怒ってたのは、あたしが投げやりなことを言ったから?





「男は貧弱そうな奴でもお前よりは力があるんだよ。この道は街灯も少ないし…一人暮らしなんだからもっと危機感持てよ!」


「……」


「って言うか、お前は力なさすぎ。モカの時に、女の客にでも簡単に押し倒されるんじゃねぇか?」


「……」





もしかして、晴がこんなことしたのは、あたしにその怖さを教えるため?


すべてが分かった瞬間、体中から力が抜け落ち、寸前でこらえてた涙が一気に零れ落ちた。





「う……うっ…」





嗚咽まで漏れるほど涙は止まらない。