【完】ヒミツの恋を君と。

みっともないってこのことだと思う。


どんどん卑屈になって、今あたしとっても醜い顔してるんだと思う。



頭の片隅にそんなことを思いながら、それでもあたしは、晴の言葉を冷静に聞けない程興奮してた。


止められないから。

卑屈な言葉も嫌な自分も……、




「……帰る!」


「は?」


「ひとりで帰れるから、晴も、もう駅に行って」




晴に背を向けて、めいっぱいの早足で歩き出す。





「おい!ちょっと待てよ!暗い道をひとりで歩くなって…」





それでもついて来る晴に、腹を立てて振り向いた。





「あたしを襲うような人はいないから、大丈夫って、前に言ったでしょ!」





あたしを無視した晴もそう思ってるんでしょ?


口には出したくないけど、そんな意味を込めてそう叫んでた。



晴が思いっきりその表情を歪める。



「っ!?ちょ!晴!?」


「……」





晴にまた手首を掴まれる。

そのまま晴は無言であたしの家に向かって歩き始めた。





「ひゃっ!ちょっと!晴」





さっきより早いスピードについていくのが必死で、転ばない様に必死で足を動かしてく。


すぐに、息が切れてきて、もう晴に言いたいことすら言えなくなって来た。



マンションの入り口に着く。

晴があたしに目を合わせないまま「鍵!」と言って掴んでる手とは反対の手を出す。



思わず、急いでバッグから鍵を出すと、晴はそれを奪う様に取って、エントランスのドアを開いて中に入っていく。



え?晴も中に入るの?

そんな疑問を口にする余裕も与えないほど、晴は乱暴にあたしを引きずって階段を上っていく。