あたしに気付いた晴が、一瞬目を見開くのが分かった。


その後、ぐっと眉間を寄せて、怒った様な、困った様な顔をした。





あ……どうしよう。

あたしここに来ちゃいけなかったんだ。

晴の表情を見てそう思った。





彼女にあたしを会わせたくなかった?


そりゃそっか、晴の周りをちょろちょろするあたしの存在なんて、彼女にとっては目障りだよね。


胸がチクッと痛んだ。




いたたまれなくなったあたしは、晴から視線を外し、『美月』と呼ばれてた彼女と、王子な先輩の方に向き直る。

このまま、「失礼しました」って言って、この場を離れようと思ったのに…。





「…え?」





2人の先輩の姿を見て、さらに頭の中が混乱した。





「よっ!晴おはよう」





そう言った王子な先輩は、美月先輩の肩を抱きよせてる。


美月先輩も、少し困ったような顔をするけど、拒否する様子もなくて…。


どうして?


あの日のパソコンルームの光景を思い出す。

美月先輩は、晴のこと好きなんでしょ?
あんなことしてたのは、2人が付き合ってるからでしょ?



それなのになんで?



晴も、くっついてる先輩達ををチラッと見ただけで何にも言わない。



ボサボサ頭で、黒縁眼鏡で、無表情。

ここまで表情のない晴をあたしは見たことがない。



あたしの横も無言のまま通り過ぎる。

あたしのことを知らないみたいな表情で。



どうしようもない焦燥感にかられた。

たまらなくなって、あたしは晴が入っていった教室に向かって大きい声を出していた。