俯いたまま顔を上げられなかったあたし。

搾り出した声は少し震えてしまってた。





「…なんねぇよ」





小さく吐き出された晴の声を認識するよりも先に、晴があたしのアゴを指でクイッと持ち上げた。


強制的に上を向かされて絡む視線。





バイト中、お客さんのサービスで晴はこの体勢をよくする。


いつもは恥かしくて、心臓がバクバクするけど、今は、不安で胸がなる。


今度は晴の声がはっきりと声が耳に届いた。






「嫌いになんてならねぇよ。だから、顔をあげてろ!お前は強くなりたいんだろ?」


「え?……あ…」


「なら下向くな。ちゃんと前向いてろ」






真っ直ぐな視線があたしを捕らえる。



「お前、前に言ったよな?バイトするのは自分を変えたいから、綺麗になりたいから、強くなりたいから、そして自分に自信を持ちたいからだって」


「…うん」


「そうなりたいのは、2人の春のためじゃねぇの?」





晴はそう言って、あたしのアゴからそっと手を離し、あたしを見つめた。


晴の言うとおり。

そうなりたい理由は──




「そんなあたしになれたら、春と春ちゃんに会いに行きたい。それから、春ちゃんにもう一度きちんと笑顔で言いたい。『春のことは好きじゃない』って」





今度は晴の顔をしっかり見ながら、思いを話す。





「2人の幸せを心から願える強い心が欲しい。もう一度2人の友達だって胸をはりたい」





初めて口に出した決意。

言い終わった後、体から少しだけ力が抜けていくのを感じた。



そんなあたしを見た晴が口を開く。