「キャ──ァ!ハルく──ん!!」





店から聞こえてきた歓喜にわく声。

その声を聞いて、さっきの晴の顔が頭に浮かんだ。





「……なーにキャーキャー言われてんだか……晴のバーカ!」





静かな部屋にあたしの独り言が響く。


あたしも、そろそろ戻らなきゃ…。

ゆっくり立ち上がって大きな鏡の前まで移動した。



あーぁホントだウイッグめちゃくちゃ…。

それを整えながら、鏡に映る自分の顔をじっと見つめた。





「……鼻赤いってば…晴のバーカ」





春に与えられた胸の中の痛みは確かにまだここに存在してる。


でも、晴に与えられた熱が冷めない。




この胸の中に、新しい“何か”の存在を微かに感じて、あたしは戸惑っていた。