気にもせず。
聞き流して。





「あ、そ、そうだ!もうこんな時間!ちょっと休み過ぎちゃった!」





なんだかこの場が急に居心地悪くなって、イスから立ち上がった。





「……」


「晴、こ、これごちそうさま!本当においしかったよ。洗い場まで持っていくね」





目の前のパフェが入ってたグラスを持って、晴が座ってるイスの前を通り過ぎ、店への入り口へ向かおうと歩を進めたその時、





「…ひゃっ!?」





グラスを掴んでる手が、強い力で掴まれ、びっくりして、目の前に立つ人を見上げる。


いつの間にかイスから立ち上がってた晴があたし手を掴んで目の前に立っていた。




「あ、あの?晴?」





あたしの言葉になんて反応せずに、もう一歩近付いた晴があたしを見下ろす。


感情の見えないその目に、ドキっと心臓が大きく跳ねて、思わず俯いた。


なに?晴?




「……っ!?」




晴の行動の意味を考えていると、晴のもう片方の手があたしのアゴを掴んだ。

グイッと上を向かされると、自然と絡む目線。





「…そんな赤い顔で、店に戻れるわけねぇだろ?」


「…!」


「なぁ、そんなに春ってヤツは特別なの?」


「……は、は、はるは…あの、ね?」





何度されても全然慣れないこの体勢に、呼吸困難寸前のあたしの頭はもう停止状態で、晴がどっちの“はる”のことを言ってるのかすら理解出来ずにいた。