【完】ヒミツの恋を君と。

『デキソコナイ』?





言われた言葉を噛み締めたまま、脳内フリーズ。



静寂5秒後──────。





今度は店内に甘い悲鳴が立ち込める。



どうやらそれはお客様方が、晴のあたしに対するドSな行動&発言に燃え(萌え)始めたから……らしい。






「モカってばいい働きするよね。ただの大人しいイケメンだったハルの新しい引き出し発見!みたいな感じだよねー」


「お客さん増えるかもしれませんね。ほら、店長が金の亡者の如き、いやらしい笑みを浮かべてます…」






トウヤさんとリツキさんの腕はいつの間にかあたしから離れていて、2人でそんな風にヒソヒソ話しで盛り上がってる。



あたし以外が盛り上がる中、あたし1人フリーズ続行……。



さっきのはパフォーマンスなの?

本気の言葉なの!?




5番テーブルに目を向ける。



綺麗にネイルされた指が、カップを持って、ぷっくりしたツヤのある唇にそのカップを近付けていく。


仕事をそつなくこなしそうな、そんな雰囲気をかもし出してる彼女。


晴と仲良くしてたお姉様。






あたしがジッと見てるのに気付いたのか、そのお姉様があたしの方を見てニコッと笑った。




あたしは急いでペコッと頭を下げる。




あたしなんかとは全然違う、余裕の表情。


晴が彼女から受け取ってたものってなんだったのかな?