「じゃあ俺、行くところあるから」
そう言って、CDを戻して資料室を出ようとした彼。
咄嗟に、彼のワイシャツを掴んだ。
「名前……教えてもらえますか?」
彼はよく通る、低くて、どこか優しい声で言った。
「早見翼」
ツバサって、あの曲と同じ名前…。
……あれ、早見翼?
今、どこかで聞いた気がする。
何だっけ…。
ハッと思い出したのは、さっきかかった放送。
『早見翼、至急生徒会室に来なさい』
「生徒会室……!」
サボらせちゃったのかもしれない。
どうしよう……!
「あぁ、大丈夫」
「でも至急って……。
先生、怒ってるんじゃ…」
さっきの鋭い声を思い出す。
「大丈夫だってば。
…またな」
「あ…ありがとうございました!」
そう言ったあたしに、彼……早見翼先輩は、片手を振った。



