32回、好きって言うよ。




「じゃあ俺、行くところあるから」



そう言って、CDを戻して資料室を出ようとした彼。



咄嗟に、彼のワイシャツを掴んだ。




「名前……教えてもらえますか?」




彼はよく通る、低くて、どこか優しい声で言った。





「早見翼」





ツバサって、あの曲と同じ名前…。


……あれ、早見翼?

今、どこかで聞いた気がする。


何だっけ…。




ハッと思い出したのは、さっきかかった放送。



『早見翼、至急生徒会室に来なさい』






「生徒会室……!」



サボらせちゃったのかもしれない。

どうしよう……!





「あぁ、大丈夫」



「でも至急って……。
先生、怒ってるんじゃ…」


さっきの鋭い声を思い出す。




「大丈夫だってば。
…またな」



「あ…ありがとうございました!」





そう言ったあたしに、彼……早見翼先輩は、片手を振った。