「いい曲ですよね…!
あたし“ツバサ”って曲がすごく好きなんです」
「俺は“夢”が好き」
「あっ、それも好きです!」
あまり有名じゃないアーティストの、少し前のアルバム。
だからこのアーティストを知ってる人が周りにいなくて、話ができたのは彼が初めてだった。
「このアーティストの話するの、初めてだな。
知ってる人、近くにいると思わなかった」
「……!あたしも、です」
同じ事を考えた。
それにビックリして、なぜか胸がキュンと締め付けられて、また涙が溜まった。
どうしてだろう。
悲しい事なんて何もないのに。
何か悪いものでも食べたかな。
……胸が、苦しい。



