32回、好きって言うよ。




だけど今、好きな人の腕の中にいることは事実で。



風が吹くたび、翼先輩に似合う香水が香る。



あぁ、風邪ひいてよかったな、なんて思ったりするんだ。






消毒液みたいな匂いがして、ゆっくり目を開くと保健室についたらしい。


そっと、大切なものを扱うみたいに。

優しくベッドに寝かせてくれた翼先輩。





「翼、先輩……」



「ん?」





いつも優しいけど、いつも以上に優しい声。


それに安心するけど、離れてしまった手が寂しくて。





風邪の時は不安になるっていうけど。それもあるけど。



翼先輩の温かさを、知ってしまったからかもしれない。