翼先輩に抱き上げられたあたしは、少女マンガっ子なら一度は憧れるお姫様抱っこってやつを絶賛体験中で。
「お、おろしてください……」
たぶん、あたしの顔は真っ赤。
「ったく、休めよ。
風邪ひいてんだろ」
……え、なんで…?
美紅にしか言ってないのに。
「気付いて…くれたんですか?」
「いいから黙って」
冷たい言葉だけど優しい口調に、大人しく黙ることにした。
温かい腕にゆられながら、目を閉じる。
なんか、ふわふわする。
あたしが今日翼先輩と話したのは、今がはじめて。
その前は会っていないから、あたしが風邪をひいてたなんて知らないはずで。
それに気づいてくれたってことは、あたしのこと見ててくれたりしたのかな……?
なんて、自惚れすぎかな。



