「あ!翼先輩、こんにちは」




優しい春の光を浴びる彼に、勇気を出して挨拶した。



「あ、うん」



“こんにちは”の返事が“あ、うん”ってどうなんだろう。


ふと思ったけど、いつもの事なので追求するのはやめた。



だってそんな疑問より、翼先輩がカッコ良すぎて。


光の当たり具合すらも絶妙で、逆に何がダメなの?ってくらい。




「性格じゃないの」




既に翼先輩の通り過ぎた廊下でいつまでもうっとりしているあたしに、親友の美紅(みく)が言った。




「翼先輩は優しいよ」


「そうかな」


「優しいの」


「はいはい」




とてつもなく面倒臭そうな返事に若干ヘコみながらも、廊下を歩く。